6月18日、北海道南部の八雲町でトラックが高速バスと正面衝突し17人が死傷した事故。
専門家はドライブレコーダーの映像からバスにとって「事故は避けられなかった」と指摘しました。
ドライブレコーダー:「わー」
センターラインを越え、向かってきたバスと正面衝突するトラック。トラックに速度を落とす様子はみられませんでした。
梶谷誠さんの親族:「原因が分かって、それが本人のせいではないと証明されたらいいと思っているよ。(Q:梶谷誠さんに持病はありましたか?)聞いたことはない。落ち着いて一生懸命仕事する真面目なヤツだったよ」
トラックを運転していた梶谷誠さんの親族が、辛い胸の内を明かしました。
運転歴30年のベテランで、これまでにも大きな事故はなかったという梶谷さん。事故はなぜ、起きてしまったのでしょうか。
沼田 海征 記者:「国道5号のトラック側の車線を走っています。直線で、見通しが良い印象を受けます」
この日、トラックは森町を出発。七飯町で30頭のブタを積み込み、八雲町に向かいました。
沼田 海征 記者:「直線から緩やかな左カーブになり、路肩が狭くなりました。このあたりが事故現場です」
事故現場までの道路は約50キロに渡ってほぼ直線でした。
警察によりますと事故現場にはトラックがブレーキをかけた痕跡が残っていないことが新たにわかりました。
交通事故鑑定人 澁澤 敬造さん:「運転手さんの人為的なエラーが事故に繋がったと考えるのが自然」
交通事故の鑑識捜査に長年携わってきた専門家は、こうした事故の一般的な原因はドライバーにあると指摘します。
交通事故鑑定人 澁澤 敬造さん:「ぼうっとしてしまうということですね。単調な運転になっていたでしょうから」
現場は事故の多い場所として知られていました。
「国道5号線八雲町通過の心得」。八雲町のホームページです。
現場の国道では居眠りや追い越しの事故が多発しているといいます。
事故で亡くなったバス運転手の興膳孝幸さん。
同じ会社に勤務し、この路線を一緒に乗務したこともある、かつての同僚は、興膳さんは非常に安全意識の高いドライバーだったと話します。
興膳さんの元同僚 月宮 正人さん:「誰よりも早く出勤されて、運行前のバスの点検や、車両の状況なども、細かく、くまなく点検される方。タイヤの溝まで細かくチェックする方でした」
ドライブレコーダーの映像から、興膳さんの思いを指摘します。
興膳さんの元同僚 月宮 正人さん:「あんな恐ろしい、凄まじい衝撃と、あれだけ余裕の無い道幅で、よくあれだけピタッとまっすぐ止まったなと。あれが彼が精一杯できた思いなのかなと」
事故の直前、興膳さんのバスは、急ブレーキをかけて道路左側に寄り、事故を避けようとしていました。
交通事故鑑定人 澁澤 敬造さん:「今回の現場では、バスの左側にガードロープといって路外に落ちないようにするための構造物がありました」
急なアクシデントで、バスに『逃げ場』がなかったことがわかります。
交通事故鑑定人 澁澤 敬造さん:「今回の事故は本当に防ぎようがない事故だなっていう感じはしますよね」
双方の運転手を含む5人が死亡、乗客12人が重軽傷を負う大きな事故。
警察は6月19日、過失運転致死の疑いでトラックを所有する会社を家宅捜索し、調べを進めています。