Q 車道で逆走してきた自転車と衝突しました。相手が負傷した場合、こちらに責任はありますか?
A 自転車は、車線が区切られた道路を通行するときは、道路の左側の車線を、車線がない道路を通行するときは道路の左側端を、それぞれ通行しなければならないとされています(道交法18条第1項、20条)。つまり、道路の左側または左側端を通行しなければなりません。
もし、道路の右側を走ると、左側を通行する自転車と対面することになるので、衝突する恐れが大きい危険な運転方法です。いまだに、右側を通行する自転車が後を絶ちませんが、もしあなたが交通ルールを守って通行していたのに、右側を通行してきた自転車と衝突してその運転者が負傷したとき、あなたの責任はあるのでしょうか。この疑問について考えてみます。
まず、誤って相手に傷害を負わせたことにより過失致傷の罪に問われる可能性があります。いささか理不尽な気もするでしょうが、相手がルール違反をしたとはいえ、全く予見できなかった、全く回避できなかったと言えない限り、重過失致傷罪が成立する可能性は残ります。現実には、右側を通行する自転車があることはよくあることでもあり、予見できなかったとは言えないでしょうし、自転車の運転者がよく注意して運転する義務もあるので、やはり、重過失致傷罪に問われる可能性はあります。もっとも、傷害の程度や、あなたの違反の有無程度等によりますが、傷害が軽く、またあなたの運転が悪質でない場合には、実際に刑事裁判にならないことが多いとは思います。
自動車の場合、80%という過失割合も
次に、相手に怪我をさせたので、それに対する賠償責任が生じるかどうかが問題です。あなたには過失がないのであれば、賠償責任は生じませんが、そうなるケースはまれで、あなたにも20%~30%の割合で過失があると認定されることが多いです。実際に、右側を通行してきた自転車の違反行為を認めつつ、左側を通行する自転車にも前方を十分注視し,周囲の安全に配慮して自転車を適切に運転すべき義務があったとして、左側を通行する自転車の過失割合を30%とした裁判例もあります。
参考に、自動車と自転車の事故の場合で、自転車が右側を通行してきて衝突したケースでの基本過失割合は、自動車80%、自転車20%です。自転車が右側を通行することはまれではないことや、互いに視認しやすい関係にあるからという理由です。
このように見ていくと、いわゆる逆走自転車と衝突した場合に、左側を通行している自転車にもそれ相応の責任が生じるということが言えます。交差点における事故などに比べると、状況は単純で、相互に視認しやすいので、ルール違反をおかしていなくても事故を回避する義務を負うことがあると言えます。
自転車の逆走とは、自転車が車道や路側帯の右側を走行することを指し、道路交通法違反です。自動車と同様、道路標識に従い、定められた進行方向に走行しましょう。
【逆走の危険性】
自動車のドライバーから見て対向車のように見えるため、事故の危険性が高まる
交通の流れを乱し、他の自転車や歩行者との接触事故を引き起こすリスクも高まる
車の運転席から見えにくく、事故の原因になりがち
【逆走の罰則】
3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金が科される可能性がある
自転車走行で繰り返し違反行為を行うと、「自転車運転者講習」の受講も必要
【逆走を避けるには】
道路標識に従う
一方通行のルールに従う
車両通行帯のある道路の場合は、一番左側の通行帯(左側車線)を通行する
自転車道が設けられている場合は、やむを得ない場合を除いて自転車道を通行する
歩道を通行できるのは、13歳未満の子供や高齢者、または特定のやむを得ない場合に限られている