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交通事故で全身火傷 指のほとんどを失った母 「娘の髪を結んであげたい」 取り返した日常また1つ (21/12/14 19:51)

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2016年に交通事故に巻き込まれ全身にやけどを負った女性。手先の不自由さを乗り越えようと、料理に買い物、様々なことに挑戦しています。 この春、掲げた新たな目標は「娘の髪を結んであげたい」。家族とともに歩んだ5年間を追いました。

 愛知県に住む、森亜美さん。

 車のハンドルには、特別な器具が、取り付けられています。

「もうほとんどなくなったけど…たまに信号が黄色に変わったときがちょっと怖いなと思って。夢にも思っていなかった。また乗れるとも思ってなかったけど…」(森亜美さん)
 
 人生を変えた事故から5年が過ぎようとしていました。

 2016年1月。亜美さんが運転する車が交差点に差し掛かった時、赤信号を無視した別の車が突っ込んできました。その時速は、約100km/h。

 亜美さんの車は大きな衝撃を受け、炎上しました。

 亜美さんは衝撃で気を失いました。

 一緒に乗っていた長女(当時1歳)はすぐに助け出され、奇跡的にけがはありませんでした。

 運転席にいた亜美さんは、顔や腕など全身の6割にやけどを負い、両手の指は不自由になりました。

「時間と顔と体と手、全部返してほしい」

 2018年2月、事故を起こした男の裁判で、亜美さんは被害者としての心情を述べました。

『今では拍手も、じゃんけんもできない。時間と顔と体と手、全部返してほしい』(亜美さんが法廷で読み上げた書面より)
  
「泣かないぞって決めていたけど、読んでるうちに泣けてしまいました。何もなかったらこういう風だったんだなと思ったら泣けましたね」(森亜美さん)

 男に出された判決は、禁錮3年10カ月の実刑でした。

 事故から2年。

 亜美さんは、手先の不自由さを乗り越えようといろいろなことに挑戦していました。

 そばにいるのは、3人兄妹の末っ娘です。

「やっぱり一人じゃないっていうのと、家族がいるから頑張らなきゃなと思って」(森亜美さん)

料理に買い物 少しずつ取り戻していく日常

 2020年12月。

 再び、亜美さんを訪ねてみると、特注の包丁を作ってもらい固いニンジンも細かくカットしていました。

 ヘルパーに頼らず、1人でキッチンに立つことが増えたと言います。

 そして、出来るようになったことがもうひとつ。

 顔のやけどが気になり、足が遠のいていたスーパーでの買い物です。

「コロナが流行って、人が少ないの時を狙って、マスクもみんなしてるし私もマスクして行ったら大丈夫かなと思って」(森亜美さん)

 事故当時1歳だった長女は、付き添いができるほど成長していました。

「いつの間にかですね。『あれ届かないから取って』と言ったら取ってくれるので。その後は特に『やって』とは言っていないです、優しさですかね」(森亜美さん)

亜美さんの願い『自分の手で娘の髪を結んであげたい』

 2021年春、小学2年生になった長女。

 成長を実感するにつれ、亜美さんは、ある思いを募らせていました。

「髪の毛を結んであげたくて。出産前に女の子って分かってそれからずっとですね。大きくなると自分でやるようになるから、それまでに一回くらいやってあげれたらいいなって」(森亜美さん)

 『自分の手で娘の髪を結んであげたい』。ささやかな願いですが、大きな挑戦でした。

 2021年1月に向かったのは、名古屋市昭和区にある「福祉用具プラザ」。

 お年寄りや障害のある人、ひとりひとりの体にあった器具をオーダメイドで作っています。

 どんな工夫をすればスムーズに髪をまとめられるのか、皆で知恵を絞ります。

 見えてきた課題を元に、試作品作りがスタート。

 福祉用具プラザの女性スタッフも加わり、アイデアを出しては、テストを繰り返します

 スタッフにとっても、初のチャレンジ。身近なものを使って、試行錯誤を繰り返していきます。

 そして、約3週間後。
 
 長女を連れてプラザへやって来た亜美さん。

  完成した試作品は、クリップとゴムを組み合わせたちょっと不思議な形です。

 長女の肩にクリップをつけて、髪の毛をゴムで束ねます。

 ワイヤーで巻いてからゴムを外すと…少し緩めですが、ひとつ結びの完成です。

「事故をする前は赤ちゃんだったし、髪も短くてやれる機会もなくて、こういう風になってしまったので、やっとやれる日が来るんだなと思うとうれしいです」(森亜美さん)

 事故で失ったものをひとつずつ、取り戻していく日々。

「『ママがやってくれた』と喜んでいたので、やれてよかったと思います」(森亜美さん)

家族と歩んできた5年間「未来は変えられるから、変えてみよう」

 2021年4月、訪れたのは近所の公園。

 満開の桜が、出迎えてくれました。

「入院したばっかの時は桜を窓から見ていて。一人で見てもちょっとな…と思って。家族で見たかったという思いがあったから」(森亜美さん)

 家族を支え、家族に支えられて、歩んできた5年間。

「未来は変えられるから、変えてみようと思っています」(森亜美さん)

 そして、取材の最後に教えてくれた、今後の夢。

「事故とか、けがとか、病気などで傷ついた方のフォローだったり、あざのある方の隠し方のアドバイスだったり、自分が事故でやけどをしちゃったからこそ気づけたことがあるので、誰かの為に何か力になれたらいいなと思っています」(森亜美さん)

※森亜美さんのその後を追った記事を12月14日に配信しています。それに合わせ2021年4月に掲載した記事を再掲しました。

#交通事故 #全身火傷 #森亜美さん

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