※事故より1年、西鉄バス側が無理な追越しを極力控えようという変化がでています。詳細は追記2を参照。
※この動画は事故確認のため、警察の指示により公開しております。
従来より、道路交通法20条に違反する車両通行帯境界線をまたぎながらの追越しをしていた西鉄バス。
車両通行帯がある道路で車両を追越す場合には、1つ右の通行帯を走行する義務が法20条3項に規定されており、車両通行帯境界線をまたぎながらの追越しは違法である旨はこちらから西日本鉄道株式会社の安全推進課及び広報課に度々お伝えしていたところです。
ところが、西日本鉄道広報担当者からの正式な回答は、「追越しではなく追抜きであるため、右側の通行帯に移る義務はなく、境界線をまたぎながらの追抜きは違法という認識はない」という回答でした。
そのような回答をもらってからしばらくして今回の事故が起こりました。
事故調査で判明したのですが、このバスはもともとは第一通行帯を走っており、自転車に追いついたので自転車の右側に進路を変えて側方を通過し、その後自転車の前に出ようとしています。これは道路交通法上の「追越し」に該当し、西日本鉄道のいう「追抜き」には該当しません。(追越しであれば、法28条4項にある安全な速度と方法により進行する義務もあります)。
そもそも西日本鉄道の説明する「追抜き」であった場合は、法20条3項に規定する通行帯違反の適用除外事由のいずれにも該当しないため、バスはバス専用通行帯である第一通行帯内を走る義務があることとなります。
つまり、第一通交帯と第ニ通行帯をまたぎながらの走行は「追越し」でも「追抜き」でも法20条違反になります。
結局、「追抜き」だから境界線またぎの追越しは合法という認識で法律と安全を軽視し、通行帯違反や追越しについての安全教育・指導をしていなかったことがこの事故を招いたものと考えます。安全推進課がよく説明に使っていた、社内規定により走行中の自転車との側方間隔を2m程度とる、という約束も守られていませんでした。
また、西日本鉄道側は、バスの前方で急減速したタクシーが悪いという主張をしておりました。しかしながら、前車が急停止をしても停止できる程度の車間距離を取る義務が後方車両にはあります(法26条)。多くの乗客を乗せるバスならなおさらでしょう。今回のケースでもしバスとタクシーが接触事故を起こしていた場合、修正前の過失割合はタクシー30%、バス70%であり、基本的にはバス側の責任が大きく問われる形態です。それに、バスが追越しの際にしっかり第二通行帯にうつっていれば、このような結果にはならなかったでしょう。
にしてつグループはコンプライアンス方針として、
「法令違反や非倫理的な行為による利益は一切求めません」
といった内容を社内外に公表しています。
こちらとしては、穏便に違法状況を解消してほしい旨、危険運転にあう都度、数十回にわたり安全推進課に申し入れをしてきましたが、結局このような事故が起こってしまいました。
自転車通行空間は原則車道に整備していく、という地方公共団体の整備計画に基づき、第一通行帯の左側に、自転車走行を促す青いナビラインが設置されている道路も増えてきました。今後、車道を走る自転車はさらに増えていくでしょう。
ハインリッヒの法則によると、一件の大事故・災害の裏には、29件の軽微な事故・災害、そして300件のヒヤリ・ハット(事故には至らなかったもののヒヤリとした、ハッとした事例)があるとされています。大事故が発生する前に、西日本鉄道という会社が法令と安全を守り、県民に愛される会社に変わってくれる事を願ってやみません。
※2019年12月13日現在、西日本鉄道法務コンプライアンス部に法20条関係の確認を申入れ中であり、再回答を待っています。
(追記1)2019年12月25日現在、法20条関連について、法務コンプライアンス部からは「業務管轄外」のため回答できないとのことでしたので、担当部署である安全推進課に再度法20条関連の適用関係の確認を申入れしています。安全推進課からは、同様の事故防止のため、実効的な対策を検討中との回答をいただいております。
(追記2 ) 2020年12月24日現在、私と西鉄バスとのトラブルはこの事故以来1回も起きていません。法20条違反はときどき見かけるものの、西鉄バスの多くが自転車を安全に追い越そうという意識変化が見て取れます。時間はかかりましたがその点に関しては評価したいと思います。