北海道斜里町の知床半島での観光船遭難は、なぜ起きてしまったのか。取材を進めると、さまざまな要因が見えてきました。どうしたら事故を防ぐことができたのでしょうか。
遭難した観光船「KAZU1(カズワン)」を運航していた知床遊覧船の桂田精一社長の会見。その発言から事故の原因となる背景が見えてきました。
観光船の運航会社は出航の判断基準を定めた「安全管理規程」を国土交通省に届け出なければなりません。
欠航の基準を風速や波の高さ、視界など具体的な数値で記入します。ところが…。
記者:「Q,何のために安全管理規程があるのか?」
運航会社「知床遊覧船」桂田 精一 社長:「安全管理規程に数値は出ていないです」
数値を記入していなかったというのです。
4月29日、海上保安庁などによる点検を受けた羅臼町の観光船。
この船の安全管理規程を見せてもらうと、具体的な数字がきちんと記入されています。
知床ネイチャークルーズ 長谷川 真人さん:「運航基準があって、これを超えたら出航を中止。沖でこの基準に達するのなら、運航を中止にしなさい、という基準」
斉藤 鉄夫 国交相:「桂田社長は安全管理規程の数字について、あやふやな場面があったが、数字を明記した安全管理規程がある」
桂田社長の安全管理に関する認識不足が明かになりました。
2022年に入ってからの「KAZU1」の整備状況について桂田社長は。
運航会社「知床遊覧船」桂田 精一 社長:「1月には来シーズンに向けて『KAZU 1』を陸に上げて、造船所の方に整備依頼。4月20日に日本小型船舶検査機構の中間検査を受け合格」
遭難の3日前に検査を受け合格していたというのですが。
記者:「Q,船首に亀裂は入っていた?」
他の観光船の船長:「そうでしょう、水が出ていたから。俺が見たのはこれくらい」
別の観光船の船長によると、約1か月前に船首部分に10センチほどの亀裂が入っていたというのです。
なぜ検査で発見されなかったのでしょうか。小型船舶の検査に詳しい人は。
船舶免許学校の代表:「さっと目視という感じ。時間をかけて検査をするわけではない」
「KAZU1」のような陸から近い海域を航行する小型船舶の検査は、5年に1度の定期検査と、毎年行われる中間検査があります。
事故の直前に行われた中間検査では、船体の損傷や変形は検査項目に含まれていません。検査のあり方が問われています。
(KAZU1の「ワン」は正式にはローマ数字)