21日、岐阜県郡上市の長良川鉄道の踏切で起きた死亡事故。現場には遮断機がありませんでしたが、長良川鉄道では今年1月にも、同様の踏切で死亡事故が起きていました。なぜ再び事故が起きたのか、現場を緊急取材しました。
21日午前7時半ごろ、郡上市大和町の長良川鉄道で起きた事故。
踏切内で列車と乗用車が衝突し、乗用車を運転していた近くに住む看護師の中嶋多美子さん(46)が死亡しました。
この死亡事故を受け、22日朝に行われたのは、国の運輸安全委員会の鉄道事故調査官らによる現地調査。事故に遭った乗用車と同型の車を用意し、車や列車からの見通しをカメラで記録するなどして、現場の状況を確認しました。
事故があった踏切は警報器はあるものの、遮断機が設置されていない、いわゆる「第三種踏切」ですが、亡くなった中嶋さんは近くに住む地元の人でした。
なぜ事故は起きたのでしょうか。
(リポート)
「車はこちらの方向から踏切内に進入しました。木に雪が積もっていると、列車が見えにくかったのかもしれません」
現場の踏切を実際に車で通ってみると、列車が向かってくる方向には住宅や木などの障害物。
見通しが良いとは言えませんが、窓を閉めていても警報音は聞こえました。しかし近所の住民は、この警報機の音が聞こえにくくなることがあると話します。
踏切近くの住民:
「雪が音を吸収しますから、音が分からなくなるんですよ。遮断機を絶対つけていただきたい」
別の住民:
「窓を閉めて運転していると、ちょっとも警報機が聞こえないらしいわ。そりゃ油断するよな、やっぱし」
雪が警報機の音を吸収し、聞こえづらくなることがあるといいます。
長良川鉄道では今年1月に、今回の踏切から350メートルほど離れた同様の踏切でも死亡事故が発生。
事故の後、この踏切には注意を促すため、郡上市が道路に赤い塗装を施したほか、看板を設置。
さらに、遮断機を設置する計画が進められていますが、今回事故が起きた踏切には注意を促す看板もありませんでした。
遮断機のない踏切で再び起きてしまった死亡事故。なぜ遮断機を設置できないのでしょうか。
長良川鉄道の運輸部長:
「資金的な面もございますし、長良川鉄道は踏切の数もかなりありますので、全てにというのはなかなかできないような状況でございます。全てに遮断機があって、安全対策が事故が起きないような踏切になっていればいいんですけども」
長良川鉄道にある137カ所の踏切のうち、警報機のみの踏切は17カ所ですが、そもそも遮断機だけでなく警報器もない踏切が29カ所もあります。
利用客の減少で毎年のように赤字が続き、資金繰りが厳しい長良川鉄道にとって、警報機の設置は簡単なことではありません。
長良川鉄道の運輸部長:
「弊社でできる安全対策を、沿線の住民の方や行政の方、警察の方とも協議をしながら進めていくしかないのかなと」
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2022年12月22日放送