中国中部・湖南省の小学校前で19日朝、車が複数の児童らをはねる事件がありました。複数の児童らがケガをして、病院に搬送されたということです。中国国内では、今回の事件、どのように受け止められているのでしょうか。北京から柳沢高志記者が中継で伝えます。
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相次ぐ無差別殺傷事件の発生に、中国国内には「またか」と衝撃が走っています。
それというのも、習近平国家主席が、先週、広東省で35人が死亡した事件の直後に、治安対策を徹底するように自ら「重要指示」を出す、異例の対応に乗り出したばかりだったからです。
その他にも、広東省の当局は、「8つの『喪失者』」に位置づけられる住民を探し出すよう、各地域の組織に対し、指示を出しました。「8つの喪失者」とは、職を失った人や人生で失意に陥った人、人間関係で不和を抱える人や、精神的なバランスを失った人などを指します。こうした人々への管理を強化する、つまり市民への締め付けを強めることで、新たな事件を防ごうということを打ち出したばかりでした。
──そうした対策、指示を打ち出している中で、こうした事件が相次ぐ背景には何があるのでしょうか。
実は地元警察が、39歳の男の身柄を拘束して取り調べ中だと発表しました。動機などについては一切触れていません。ただ、最近、中国のSNSなどでもキーワードとなっているのが、「社会への報復」という言葉です。
19日朝の事件の直後にも、中国のSNSでは、「最近、こんなことが多すぎておかしい。社会への報復か」「不公平な社会への報復が原因だ」というような声が相次ぎました。
相次ぐ中国での無差別殺傷事件の特徴の一つは、捕まることを覚悟の上での犯行だということです。
中国政府は、「世界で一番安全な国」と自画自賛しているのですが、その安全というのは、街の至る所に監視カメラがあって、携帯電話などの情報もすべて当局が監視可能な状態にあるということを意味します。
ですので、犯罪を実行して逃げるというのはかなり難しいのですが、最近の事件では、犯人たちは最初から逃げる気などなく、自暴自棄になって、社会への不満を表すために犯罪に及んでいるというのが実態といえます。ですから、町中を監視カメラだらけにして抑止するという、従来の中国式が通用しない状況です。
──そもそも、人々が自暴自棄となるその要因としてはどんなことが考えられるのでしょうか。
中国では、経済の低迷が続き、格差は広がり、社会保障制度も整っていない中で、将来に対する不安が市民の間に広がっています。こうした不安が、社会への不満につながり、そして無差別殺傷事件という形での「社会への報復」を招いているといえます。
中国政府は、不安や不満の高まりが、政権への批判につながることを警戒して、さらに国民を締め付けることで新たな事件を防ごうとしていますが、根本的な国民の不安や閉塞(へいそく)感を解消できない限り、問題の解決にはつながらないといえそうです。
──柳沢さん自身もいま北京で生活していて、街の中で不安に思ったり、怖い思いをすることは実際にありますか?
北京で暮らしていると、とにかく多くの数の監視カメラがありますので、実際に事件が起きる頻度というのは非常に低いんです。実際に暮らしていると、怖いな、危ないなと感じることはなく、女性が夜中に1人で歩いていても安心といえるような状況です。ただこうした安心・安全というのは、当局による徹底した監視と引き換えに与えられているものではあるので、中国国民の中では、精神的な圧迫感や閉塞感というのは広がっているといえると思います。
(2024年11月19日放送「news every.」より)
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