6月18日北海道・八雲町の国道で5人が死亡した悲惨な事故。
国は、現場付近を「危険区域」として選定していながら、安全対策は行っていませんでした。
事故はなぜ防げなかったのでしょうか。
カメラに笑顔を見せる1人の男性。
今回、事故に遭ったバスを運転していた興膳孝幸さん(64)です。
業務が終わった後にバスを清掃しているところを撮影した写真です。
4日前、この笑顔が奪われました。
「わーっ」
6月18日正午ごろ、八雲町の国道で対向車線をはみ出したトラックが、興膳さんが運転する高速バスに衝突。
後ろを走っていた車の上を飛び越えて、ミラーのようなものが吹き飛ばされるほどの衝撃です。
この事故で、興膳さんを含むあわせて5人が死亡、12人が重軽傷を負いました。
運転歴15年の興膳さん。
かつての同僚はドライバーの”かがみ”だったと悔しさをにじませます。
興膳さんの元同僚 月宮 正人さん:「誰よりも早く出勤して、運行前のバスの点検や車両の状況など細かく点検していた。人間的にすごく魅力がある人」
元ガイドの女性:「怖かっただろうなって興膳さん…悔しいです」
現場の制限速度は50キロ。
バスの運行会社によりますと、事故直前の運行記録では、バスは約時速50キロで走行していたことがわかっています。
事故は防げなかったのでしょうか。
興膳さんの元同僚 月宮 正人さん:「私は実際にあの路線も運転しました。あの道幅だし、避けようが無かった」
元ガイドの女性:「片側1車線の何も分離帯がない道路は、ちょっと危ないって思う」
北海道開発局 道路維持課 谷津 臣則 課長補佐:「14キロの中でも、事故が多いところと、そうではないところで濃淡がある。今回事故が起きてしまったところは、過去10年においても大きな事故は今までなかったので、対策の優先度は低かった」
こうした行政側の事情にも詳しい、交通の専門家は…
北海道大学 萩原 亨 教授:「すべてを道路側で背負って対策するのは無理だと思います。やはり中央分離帯を整備するのが最終段階です。道路側からそれを全部やるのはお金がかかる自動車側にも安全装置を装備していく必要もある」
斉藤 健太 記者:「午後2時15分、捜査員がトラックの前に集まってきました。これから調べが始まります」
22日、事故後初めて捜査員が事故を起こしたトラックを調べました。
ドライブレコーダーなど証拠品を押収したとみられます。
現場にはきょうも花が手向けられています。