船底の穴から原因究明に迫ります。
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14人の命を奪い、依然12人が行方不明となっている重大事故の
「証拠物」でもある船体は シートで覆われていましたが…
6月1日 長沢 祐記者(網走港)
「KAZUⅠの船底がはっきりと確認できます。
船底に穴のようなものが見えます」
シートのすき間から 後部の船底に
穴や亀裂のような損傷が確認できました。
わずかに見えた船底の穴。
沈没との関連は?海の事故に詳しい専門家たちに
考察してもらいました。
6月1日、カメラが捉えた「KAZUⅠ」の船底の損傷は
後部に穴が1つ、傷やヒビのようなものが2つでした。
気になるのはやはり「穴」です。
元海上保安監で、知床半島周辺の海にも詳しい
海上災害防止センター理事長の伊藤 裕康さんに聞きました。
海上災害防止センター理事長・伊藤 裕康理事長
「穴の様子を見ると、下から突き上げたような形で
穴がへこんでるように見えますので、下から上に力が加わったかなと
いうふうに見ています。船が海底に落下した瞬間に何か硬いものに
当たって、穴ができていた可能性も一つありますが、
非常に不可解な穴ですので、この辺については 専門家の意見を
しっかり聞いた方がいいと思う」
伊藤さんは「船が沈没し 海底にぶつかった際に穴ができたのでは」と
推察しました。
一方で、穴の位置や形状から、別な可能性を指摘するのは
水難事故の専門家で、船体の材料などにも詳しい斎藤 秀俊さんです。
斎藤 秀俊 水難学会会長 (長岡技術科学大学大学院 教授)
「穴が四角い穴というところがかなり気になる。
直線的に すぱっと切れていて、切り口からはガラス繊維だと
思うんですが、繊維状のものが見えている。あのような壊れ方を
FRPがする時って要するに「座屈(ざくつ)」という現象から
「割れ」という現象に入ったときに、あのような割れ方をする。
「座屈」というのは、ほぼ穴の形と同じものが長時間、
強い力で当てられると起きる現象なんです。最後とうとう
耐え切れなくなってパリッと割れてくわけです」
同じ部分に長い時間、強い力がかかり、その部分が弱っていく
「座屈」が起きたという指摘です。
「KAZUⅠ」の運航会社の元従業員も、私たちの取材に
「冬に保管する際、船底の強度の弱い部分を台座に当て、
穴が開いたのではないか」と話しました。
去年4月、海におろす直前の「KAZUⅠ」の写真には
船底に、こすったようなキズ痕が残されていました。
撮影したのは、漁船などに詳しい人物で
「船底の傷み具合や メンテナンスの悪さに驚いた」と語っています。
こうした情報を総合すると、船底の穴が冬の船の保管に関係していた
可能性もありえます。
4月23日、知床半島沖で沈没し、6月1日に網走で陸揚げされた
観光船「KAZUⅠ」
沈没の原因の究明について海上保安庁の元幹部で、
日本水難救済会・常務理事の遠山 純司さんは
そう簡単にはいかないだろうと指摘します。
遠山 純司・日本水難救済会 常務理事(元第3管区海上保安本部長)
「いくつか船底に傷穴があるのでしょうから、
それを一つ一つその確認をして、それがいつの段階で
どのような原因で起こったのか、沈没に至るような原因になる
傷なのかというのを、緻密に今後調べていくということになる」
堀 啓知キャスター
「いくつかまだ穴があるという情報もあります」
遠山さん
「船が沈むということは、必ず船内に水が入ったということですから
船にある全ての穴、亀裂、船体の上の方にあるハッチや扉が
当時どのような状況になっていて、そこから水が入った可能性が
あるか 全部これらを確認する必要がある」
堀 キャスター
「今回の事故の経緯を省みるとですね、どれぐらい原因特定までに
時間がかかると推測されますか」
遠山さん
「沈んだ原因っていうのは物的、物証的にも分かっていないところ。
どのようなルートを走ってきたのかというのも分かっていない
ということで、事故の原因を特定する証拠というのはほとんどない。
私の経験上から言うと早くても半年、1年前後ぐらいかかるのが
通常のパターンではないか」
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