北海道の知床半島沖で沈没した観光船「KAZU I(カズワン)」について、運輸安全委員会がこれまでの調査をまとめた経過報告を公表しました。沈没直前の、乗客と家族との最後のやりとりも明らかになりました。
知床半島の雄大な自然。今年4月に沈没した観光船「KAZU I」から見つかった、乗客のカメラに残されていたものです。
時間は午前11時22分。このわずか2時間後に船は沈没し、20人が死亡、6人が今も行方不明のままです。
運輸安全委員会がきょう公表した経過報告書には、こうした写真や沈没に至る要因の分析などがおよそ70ページに渡り記載されています。
乗客の男性
「船が沈みよる。今までありがとう」
報告書では、沈没直前に乗客が家族にかけた電話の内容も明らかになりました。
さらに別の乗客は、家族に緊迫した状況を訴えます。
乗客の男性
「船首が浸水して船が沈みかかっている。浸水して足まで浸かっている、冷た過ぎて泳ぐことはできない、飛び込むこともできない」
会話の終了時刻は午後1時26分。これが、確認された陸上と「KAZU I」との最後の通信でした。
運輸安全委員会が沈没の要因を招いたと結論づけたのが、船首付近の甲板にあるおよそ50センチ四方のハッチの蓋です。
ハッチの蓋を止めるクリップが完全に止まっておらず、揺れでふたが開き船底に海水が流入。船底は3つの隔壁で区切られていましたが、いずれの隔壁にも穴があいていて、海水が機関室へと流入して浸水が拡大しました。
さらに、開いたハッチの蓋が波の衝撃で外れ、客室の窓ガラスに当たってガラスが割れたため、そこからも大量の海水が中に流れ込んだことで船が沈没したと推論しています。
行方不明者の家族
「普段からちゃんと点検とか管理とかを徹底していなかったということじゃないのかなと」
7歳の息子とその母親の行方がいまだわからないままとなっている北海道の男性。国の管理体制にも不信感をあらわにしました。
「あまりにもJCI(日本小型船舶検査機構)の検査、国交省の検査・監査が怠慢というか、ずさん。ただ見て、書類を見て目を通してはんこを押して。そういうでたらめなことをやっていたのではないかなと」
運輸安全委員会は再発防止に向け、国交大臣に対し、▼小型旅客船の事業者にハッチを確実に閉め、浸水のおそれがないことを緊急点検するよう指導することなどを求めるとともに、▼船底の隔壁について水圧がかかっても水が漏れない「水密化」の検討をするよう求めています。
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